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モンテーニュ通りのカフェ [映画・DVD]

Montaigne.jpg

 少し前の話題になるけれど、エコールド・パリの画家、モディリアーニが制作した彫像が、パリで行われたクリスティーズのオークションにて48億円で落札されたと云うニュースがあった。

http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2736125/5879512

 これはモディの絵画を含めた全作品に付けられた値段の中での最高値。そもそも、今回の落札予想価格も400~600万ユーロ(約4億5000万~6億7000万円)程度だと思われていたそうだが、クリスティーズさえ思いも寄らなかっただろう高値がつけられてしまったわけだ。


 このニュースを読んで僕が思い出したのは、フランス映画の「モンテーニュ通りのカフェ」

 一応の主人公は、失恋してパリへ出て来た若い女の子。だけど、物語は彼女以外の登場人物それぞれにもスポットが当たり、フランス映画お得意の群像劇として、物語は多面的に展開する。

 その中に、この映画のシナリオに必要不可欠なアイテムとして、幾つもの著名作家による美術作品が散りばめられている。ごく簡単に筋を説明してしまうと、登場人物の一人が、一代で成功して財を成しコレクションした美術品たちが、いつの間にか生まれてしまった心の隔絶に因って、父から子へと受け渡されることなく、今まさにオークションで処分されようとしているのだ。

 そこで、美術品たちの中でも主役級の重要なポジションを任されているのが、モディリアーニの友人で、彼に彫刻を手ほどきしたブランクーシ『接吻』なのだ。

ブランクーシ接吻.jpg

 オークションを控えた会場に並べられた美術品たちを背にして、未だその所有者である男は呟く。
 「私はこれらを売ることは出来る。でも、二度と手に入れることは出来ない」と。


 父の集めた美術品などにまるで興味の無かった息子は、オークションの当日までの数日、父と交わした何気ない会話の中で、その『接吻』が父と亡き母にとって、そして自分を含めた家族にとって、絶対に手放してはならない、かけがえのない物なのだと気付いてゆく。しかし、時は既に遅く、『接吻』はオークションの壇上に載せられしまうのだ。




 ネタばらしにならない様に詳しく書く必要も無いと、敢えてあまり調べ直さず書いたので、セリフなんかはそのままではないけれど、大体はこんな感じのストーリー。ま、群像劇なので、これとは別に他の話も平行して進むのですが、フランス映画で同じく美術品や遺産の相続をテーマとして取り上げた「夏時間の庭」「サンジャックへの道」と見比べるのも面白いでしょう。


 それはそうと、モディの彫像を48億円で売った売り主さんは望外なお金を手に入れて喜んだのでしょうか。
 それとも、事の後、2度とあの彫像を手に入れられないのだと気付かされ、淋しさを感じたでしょうか。

 このお話も映画にするのなら、後者じゃないと、ね(^^;。
 
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